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2011年10月17日(月)
【L-6】
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ポールスターリーディング lesson6
Just Out of Curiosity
@
もしかしたら頑固なリポーターとしての性分なのかもしれないし、あるいは根っからの空想家なのかもしれない。いずれにせよ、気付くと私は自分が読むどの新聞でも「尋ね人」欄(注:ここでは交際相手を募集する個人広告)のページをめくっている。私は 19年間幸せに結婚生活を送っており、新しい夫を探すはずもない。それでも私がこうした個人広告につい引き寄せられてしまうのは、それらの中に日々の希望や夢が具現化されているからだ。

A
1991年のある日、地方紙の「尋ね人」欄を見ていて、私の目がとある広告でぱったり止まった。「これまた変わってるわね!」私は思った。「本気かしら?」私の目にとまったその広告にはこう書いてあった。
ヘンリエッタ、私たちが1938年にキャンプ・タミメントで出会い、デートしたことを覚えていますか?君の事を忘れたことはありません。お電話くお電話ください。アービング。

普通の広告の IDナンバーではなく電話番号が載っていた。「何かの冗談かしら。」私はいろいろ考えた。
一晩中アービングの要望について考えた。個人広告にはかなりお金がかかるということは記憶していた。誰もそんな大金を冗談につぎ込むわけがない。というか冗談の要素が見当たらない。ついに翌朝、私は答えを知らなくてはならないと決断した。勇気を奮い起こして例の広告の番号に電話した。
熟年男性の声が返ってきた。アービングだった。彼の声を聞いて冗談でも何でもないことを知った。この時にはもう電話しようと決断したことをほとんど後悔していた。この電話で彼が期待に胸を膨らませないことを願った。「あの、私はヘンリエッタではありません。」私は言った。「お気に触らなければよろしいのですが、あなたの広告に興味をそそられまして。一体どんなお話なのかどうしても知りたいと思いました。」
アービングは 1938年に始まる話を説明し始めた。「あの夏のあいだ、私とヘンリエッタはペンシルバニアのキャンプ・タミメントで指導員をしていました。そこで私たちは恋に落ちました。お互い自分にぴったりの相手だと確信しました。
しかしヘンリエッタの両親が反対しました。彼女は当時まだ 17歳、真剣に交際するにはまだ若すぎると考えたのです。その年の秋、両親は彼女を私から遠ざけようとヨーロッパのおばの家に行かせました。そのままヨーロッパに数年いたでしょうか。パリにいるときに彼女は後に夫となる男性と出会いました。私は打ちひしがれ、結局ほかの女性と結婚しました。妻のことは愛していましたが、ヘンリエッタを忘れたことはありませんでした。私は 3年前に妻に先立たれてからずっと孤独でした。最近になってヘンリエッタのことをますます想うようになりました。まだ元気だろうか、まだ家庭を持っているだろうか、私たちはまたやり直せないだろうかとかいろいろ考えました。私は馬鹿な男なのかもしれませんが、新聞に載せた広告をヘンリエッタがなんとか見てくれないだろうかと一縷の望みをかけていたのです。」
Bアービングの話は胸を打つものだった。彼のヘンリエッタへの変わらぬ想いに驚かされた。ジャーナリストとしての性分から彼にその話を書き直して掲載してもいいか聞いてみることにした。アービングは快諾した。残念ながら編集長がこのアイデアを全然気に入ってくれなかった。けれども私はアービングの人捜しがどんな結末を迎えるか知りたかったし電話越しのどんな結末を迎えるか知りたかったし電話越しの彼に好意を持ち始めていたから、彼の電話番号を取っておいて時々電話した。この話がどう進展していくのか見ていたかった。不幸にも彼は自分が望んでいた電話を受けることはなかった。
Cアービングに初めて電話をしてから 2年後、私はニューヨークの地下鉄に乗りながらまた「尋ね人」欄を見ていた。誰かがそばでくすくす笑うのが聞こえた。「新しい旦那さんをお探し?」隣に座っていた婦人が微笑んで私の結婚指輪を指差した。
「あら。」私は少しきまり悪くて赤くなった。「ただ面白半分に読んでいただけです。あの、たんなる好奇心ですよ。あなたは個人広告を読みたくなったことはないのですか?」
「いいえ、私は。」彼女が首を振って答えた。「こういうページは哀愁が多すぎるのよ。見てると胸が痛くなるの。この手の広告は。」彼女は私に温かい笑顔を向けた。「でも同じものでも人によって見方はさまざま。これって面白くありません?」
彼女に興味が湧いてきた。「ある点、その通りでしょうね。」私は同意した。「こういうページは哀愁がいっぱい。」私はアービングとヘンリエッタの話を聞かせ始めた。彼女はすっかりこの恋話に夢中になった。「まあ…」私は締めくくった。「アービングはヘンリエッタを見つけてその後ずっと幸せに暮らしましたとさ、なんて言えればいいんですけど。ハッピーエンドはないんです。ヘンリエッタはもうこの世にいないか、別の街で暮らしているか、それとも単に広告を見なかっただけなのか。」
「 3番目よ。」婦人が私の肩をやさしくたたきながら言った。「本当よ。私、知ってるの。ねえ、あなた教えてくれないかしら。彼の電話番号はまだお持ち?」彼女が目を輝かせながら聞いてきた。


10:47
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